認知症の家族が失火、重過失とみなされるか

認知症の家族が失火、重過失とみなされるか

高齢化社会が進み日本国内の認知症患者数は2012年時点で約462万人、2025年には1.5倍となる700万人にのぼると予測されています。そんな中、2013年4月に認知症の家人が起こした火災事故に対して、類焼先のご家族が賠償請求をする事態がありました。高齢者と同居の多くのご家庭が注目したであろうこの裁判、重要なキーワードとなった”重大な過失”について理解を深めておきましょう。

失火元に賠償請求。事の顛末とは

失火元に賠償請求。事の顛末とは

2013年4月2日、認知症の夫と自宅介護に明け暮れる妻の夫婦の家で事件は起こりました。妻が出かけていたほんの少しの間に夫は火を紙くずにつけて放り、布団に引火した炎は家を燃やし隣家の屋根まで移ってしまったのです。類焼被害に遭った隣家の住人は認知症の夫から目を離した点について、監督義務を怠ったとして200万円の賠償を求めました。

理由はどうであれ隣家に被害を与えたのは事実であるため、賠償は当然だと思われる方もいらっしゃるでしょう。ところが日本の法律は火災事故に対しては複雑になっているのです。

失火責任法と重大な過失

日本では「失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)」と言う、類焼被害を出した失火元に対して賠償請求を行うことはできないという法律があります。しかしその法律も「失火元に重大な過失あると見なされた場合」は適用されません。

重大な過失とは、”注意をしていれば未然に防げたであろう火事の要因を見過ごした状態”とされており、「寝タバコ」「てんぷら油を火にかけたまま放置した」などが代表的です。ここで隣家が主張したのは「認知症の家人を放置して外出した過失」ですが、妻はこれに対し「夫は他人に危害を与えたことはなく事故当日も安定していた」と主張しています。夫婦は二人きりで生活しており、家を空けたのは不可抗力ではないのかという声も多数上がりました。

重過失の有無で保険の支払いは変わる

ここまでのトラブルに至ったのは、どちらのご家庭もきちんと火災保険に加入していなかったことが原因です。各家庭が火災保険に加入していれば、火災事故の損害に対する修繕費用は保険会社から受け取ることが出来たでしょう。しかし万が一保険に加入していたとしても、重大な過失の有無で保険適用は大きく変わります

重過失には”個人賠償責任補償”

重過失には”個人賠償責任補償”

基本的に類焼被害者は自分の火災保険で損害に対する補填を行わなければいけません。先ほどの失火法も理由の一つですが、火災保険は契約物件に対する補償を行うことしか出来ないので、例え失火元が保険に加入していたとしても隣家への賠償金は支払われないのです。(※類焼損害特約を除く)

しかし重大な過失が認められた場合、失火元が「個人賠償責任補償」を付帯させていれば賠償金を補填することが可能です。個人賠償責任補償は火災保険の特約(オプション)として付帯させるもので、契約者に法的な賠償責任が発生している場合に保険金が支払われます。幼い子どもや認知症をお患いのご家族がいるご家庭には非常におすすめな補償です。

万が一を考えて保険は適切に加入しましょう

万が一を考えて保険は適切に加入しましょう

今回の件は一審では妻の重過失が認められたものの、控訴審でその判決は覆り裁判所は「妻の無罪を前提とした和解」を勧告、成立したために不問となりました。このように重過失の認定は細かな状況や裁判の内容により変わるため「こういうケースでは認められる・認められない」という断定的な答えはありません。

突然の事故で重過失認定、多額の賠償金を背負うことになっては普通の生活を送ることが不可能になってしまいます。万が一のことを考えて火災保険にはしっかりと加入し、個人賠償責任補償などの特約も吟味して補償内容を検討することが望ましいでしょう。

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