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火災保険の知識

放火による被害は火災保険で補償されるのか?補償範囲と例外について解説

放火による被害は火災保険で保障されますか?補償範囲と例外について解説します

放火によって被害を被った場合、火災保険はどの程度まで補償してくれるのでしょうか。放火は犯罪であることから、自分とは無縁の出来事のように思われている方も多いでしょう。

しかし、平成30年版 消防白書によれば、失火原因第1位は煙草によるもので3,712件ですが、第2位は放火でその件数は3,528件にも上ります。

引用元:平成30年版 消防白書|総務省消防庁

出火原因として「放火の疑い」に留まる2,305件まで含めると、火災の原因の7件に1件は放火、放火の疑いがもたれている統計となります。そこで、今回は放火による火災保険の範囲についてみていきましょう。

この記事でわかること

1. 放火は火災保険で補償されるのか?
2. 補償されないケース
3. もらい火でも補償される
4. 火災保険の申請手順

放火されたら火災保険で補償されるのか?

放火された場合の火災保険の支払いの有無

放火による被害は火災保険の補償範囲に含まれます。被害を受けたとしても、放火犯が賠償を行うものではありません。

しかし、補償を受けられないケースもあるため、以下でみていきましょう。

 放火でも補償を受けられないケース

放火でも補償を受けられないケースとしては以下の2つがあります。

1.故意によるもの

契約者本人が放火した場合は補償を受けられません。本人だけでなく、その妻や子供などの家族が放火しても同様です。故意による火災は火災保険の対象外となります。

例えば、ニュースなどで報道される保険金目的の放火が該当します。

2.重大な過失によるもの

重大な過失によるものと判定された場合です。例えば、全国消防協会が出版した「ほのお 」に失火責任法の適用が否定された事例として以下が上げられています。

店舗併用住宅の一部を賃借している主婦が天ぷら油を入れた鍋をガスコンロで加熱したまま放置し、来客の応対をしていたため、天ぷら油に火が入って火災となり、賃借している居住部分を含む住宅が全焼した事例(東京地裁昭和57年3月29日判決)

引用:教養誌「ほのお1997年10月号」|日本財団図書館

このような事例は無数にあるため、全てを網羅することは出来ません。そのうえで、参考になるのが昭和32年7月9日に下された最高裁判所の判例です。その中で「重大ナル過失の意義」について以下のように述べられています。

 一 明治三二年法律第四〇号「失火ノ責任ニ関スル法律」但書の規定する「重大ナル過失」とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見すごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解すべきである。

引用元:最高裁判所判例集|裁判所

つまり、ほんのわずかな注意によって防ぐことができ、ほぼ見過ごした・故意に等しい注意欠如と判断される場合には補償を受け取れない可能性があります。

火災保険で十分な補償を受け取れるのか?

火災保険の補償内容は契約した保険商品や特約により異なるため、以下でみていきましょう。

住宅の被害の補償

住宅の損害に対する保険金の算出方法は、保険金額を上限として、火災による損害額の分の保険金が支払われるというもの。そのため保険金額の算定には住宅価値と損害程度の2つの評価が必要となります。

そこで被害を受けた住宅の価値の算定方法として「新価実損払い」と「時価払い」の2種類があります。

まず新価実損支払いとは保険金額の上限を限度に実際の損害額が新築価格基準(再調達価格)で支払われる算定方式です。これは対象を「今、直したときにかかる金額」を意味します。

住宅の取得価格は消費税の増税や建築価格の上昇など様々な要因で変動するものです。例えば、ある住宅を10年前に2000万円で建築できたとしても、今は同じ金額で同じ建物を建てることが出来なくなっている可能性があります。

しかし新価実損払いなら「保険金額を上限に実際に直すのにかかる費用」が支払われるので価格変動にも対応できます。

これに対して時価払いとは対象の経過年数分を減価償却した評価額なので、新築の時にかかった費用より必ず安くなります。同じものを新しく建て替えるには保険金に加えて自己負担が必要となる事が多いでしょう。

2021年現在の火災保険においては「新価実損支払い」方式がデフォルトとなっているのが普通ですが、1998年に実施された保険料自由化以前の契約の場合は時価払いになっている事もあるので保険金請求の際は注意してください。

そして次に被害の算定ですが、火災保険の場合は以下の条件を満たした「全損」とそれ以外に分かれます。

・保険の対象である建物の焼失、または損壊した延床面積が80%以上になった場合
・保険の対象である建物の損害額が保険金額の80%以上になった場合
・保険の対象である建物が明らかに跡形もなく全焼した場合

上記の条件を満たすと建物全体を新価、あるいは時価で算出した金額が被害額となります。

火災というと、全焼や半焼といった言葉をニュースでよく見かけるため、半焼だと住宅の評価の半分しか支払われないといったイメージがありますが、火災保険には半焼や部分焼けといった判定はありません。

全焼、半焼、部分焼けは消防署が定める焼損程度の区分なので、火災保険の判定とは異なります。全損以外は被害に応じて適切な鑑定がされるので、特定の区分けで急激に保険金額が上下するということはありません。

この辺りは非常に混同しやすいものです。詳しくは以下の記事にて基準を詳しく解説しているのでご覧ください。

【火災保険】全焼と半焼の基準は?保険の補償内容と注意点

家財の被害の補償

火災によって失われるのは住居だけではありません。家具や衣類・電化製品など家財も焼けてしまいます。

被害を受けた家財についても火災保険の補償範囲となっており、保険金額については住宅同様に保険商品によって補償内容が異なります。

その範囲としては基本的には衣類やPCを含む家電、タンス、食器などが動産(動かせる財産)として補償されますが、PCにインストールしたデータ類やペット(動物)、植物はその範囲ではありません。

また1点(1組)30万円を超える貴金属や美術品に関しては「明記物件」として、あらかじめ申請しておかなければ補償されないことがあります。

保険の約款に補償の範囲が記載されているので事前に内容をチェックしましょう。

火災により怪我をした場合の補償

火災保険の適用範囲には、火災によって火傷を負った・怪我のせいで働けなくなった場合の補償は含まれていません。火災によって被った人的被害は傷害保険や生命保険の範疇となります。

ただし都道府県民共済の新型火災共済では亡くなってしまった場合の補償を受けられます。

免責金額以下の場合

免責金額とは損害の中で自己負担として処理すべき金額です。免責金額の項目については契約内容によって異なりますが、仮に設定している場合は、免責金額未満の被害については保険金が下りません。

例えば、免責金額を50万円に設定している場合、50万円を自己負担額として差し引き支払われます。

全焼などした場合は補償金額が大きくなるので免責金額を考慮する必要はありませんが、ボヤであれば被害が限定されます。契約内容をチェックしましょう。

もらい火は火災保険の対象

もらい火した場合の火災保険の補償範囲

もらい火とは隣家の火災が自宅にまで燃え移ることで正式には類焼といいます。もらい火による火災の被害についても火災保険は補償してくれます。

ちなみに火元には重大過失でない限り賠償責任はありません。隣家からのもらい火によって、自宅が焼失しても「失火責任法」により火元に損害賠償請求することは出来ない点に注意が必要です。

仮に火災保険に入っていない状態でもらい火してしまった場合には、再建費用は全額自己負担となります。

また、自宅が火事になって隣家まで燃え広がってしまった場合にも賠償責任を負う必要はありません。しかし下記の保険に入っておくと類焼させてしまった場合に一定金額を補償してもらえるので、火災後の隣家との関係改善に役立つでしょう。

失火見舞費用保険金:1軒20万円を上限にお見舞金を支払う。200万円を限度にしたものが多い。
類焼損害保険金:類焼先が保険に入っていない場合に限り1事故1億限度に支払う。

自宅がもらい火するのも、自宅から隣家に類焼するのも避けたいものですが、万が一の自己防衛のためにも火災保険は必要だと言えます。

保険金請求の流れ

保険請求の流れ

火災の保険金請求は手続きは若干複雑です。自然災害によって引き起こされた被害の請求とは流れが異なり、複数回現地確認に同行する必要があるからです。火災保険の契約内容を確認した上で保険会社に直接連絡するか、あるいは契約した保険代理店に被害の概要を連絡してください。

すると、火災の被害を確認するため鑑定会社から鑑定人がやってきます。この調査員は保険会社に所属していない第三者機関です。

日時を決定したら調査員に同行して現場に向かいます。写真撮影などの所要時間は1時間程度とされていますが、この調査結果が保険適用の可否を分けるので非常に重要なプロセスだと言えます。第三者機関による調査・監査の結果、火災と判定されれば保険会社が定めるフォーマットに則り、保険金請求を行います。

書類作成はやや難しく、記載内容が大きく保険金に影響を及ぼします。そのため申請サポートを利用するなど、プロのアドバイスを受けたほうが確実でしょう。

所定の書類を提出すると、今度は保険会社の調査員が最終鑑定のために現地にやってきます。第三者機関の調査員の時と同様に、日時を決めて現地調査に同行してください。

そして、現地鑑定後に保険金額が決定され振り込まれます。以上が放火による火災の保険金申請の流れとなります

保険金申請の連絡から保険金振り込みまでに必要な期間は、通常1週間から1か月程とされています。住居を失い、すぐにでも保険金が必要な状況の場合、手続きが煩雑に思われるかもしれません。しかし放火という犯罪が関わっており、被害額が大きいので調査は厳密なものになりますし、書類の記載内容の重要性も増します。

正当な保険金の支払いを受けられるよう十分に注意を払ってください。

また書類作成の不備がないよう火災保険申請サポートの利用をおすすめします。

まとめ

1. 放火やもらい火による被害は火災保険の対象内
2. 故意または重大な過失によるものは対象外
3. 被害認定には複数回の現地調査が必要になる
4. 金額が大きいので不備の無いよう火災保険申請サポートがおすすめ

 

執筆者

長谷部 耕平 

専業WEBライター。上場企業を含む様々なメディアで執筆しています。ガジェット・ITツール・企業・エンタメなどジャンルを問わず幅広く対応。YouTuberとしても活動中です。

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